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2006年12月11日の日記

国が控訴・抗議声明

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 12月11日、国は、12月1日の神戸地裁判決を不服として大阪高裁に控訴しました。
 これに対して、原告団・弁護団は抗議の声明を発表しました。

※写真は控訴を受けて会見した東京原告団代表の宇都宮孝良さん(左から2人目)

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神戸地裁判決を踏まえて、早急に「孤児」に対する生活保障等の
支援策の具体化を!

 政府の控訴に対する声明
         2006年12月11日
  中国残留孤児国家賠償訴訟原告団全国連絡会
  中国残留孤児国家賠償訴訟弁護団全国連絡会

 本日、政府は、日中国交回復後の違法な帰国制限と帰国後の自立支援義務懈怠について国の賠償責任を認めた中国残留孤児国家賠償訴訟神戸地裁判決に対し、これを不服として大阪高等裁判所に控訴した。
 これは、兵庫原告だけでなく、高齢化が進み、残された人生の時間が長いとはいえない全国の孤児とその家族らの切実な願いを踏みにじり、訴訟を継続させることで中国残留孤児問題の全面解決をいたずらに遅らせる暴挙であり、神戸地裁判決の言葉を借りれば、まさに「無慈悲な」政策決定であると言わなければならない。われわれ全国原告団連絡会と全国弁護団連絡会は、政府に対し、心の底から抗議する。
 厚生労働省は、本日の控訴に当たって「今後ともきめ細やかな支援施策に努めてまいりたい」とコメントした。しかし、その具体的内容はまったく明らかではない。特に、焦点である孤児独自の給付金の創設にはまったく触れておらず、これでは安倍総理大臣が言明した「きめ細かい支援策」とは程遠いものといわざるを得ない。
 現在全国の孤児の9割に相当する2200名が15地裁・1高裁に同様の提訴をしている。孤児らが裁判に託しているものは、国の責任において、安心できる老後の生活の保障制度を確立することである。政府は、安倍総理大臣が国会答弁で言明したとおり、中国残留孤児に対する「よりきめ細やかな支援策」を速やかに具体化するため、総理大臣、厚生労働大臣自らが、当事者である孤児と直ちに面談し、その深刻かつ長年にわたる被害の実態と孤児たちが求める真の自立に向けた全面解決要求に耳を傾けるべきである。そして、厚生労働省は、直ちに全国原告団協議会との協議を開始すべきである。
 全国の原告団および弁護団は、政府の不当な控訴、解決の引き延ばしに屈することなく、「日本に帰ってきてよかった」思える日が来るまで、これを支援する国民とともに闘い続けることを表明する。そして、これまで残留孤児に寄せられた国民の皆さんの温かいご支援に心から感謝するとともに、今後ともこれまでに増して大きなご理解、ご支援をお願いするものである。

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声  明

  中国残留孤児「国家賠償」訴訟兵庫原告団
  中国残留孤児「国家賠償」訴訟兵庫弁護団

 本日、政府は、日中国交回復後の違法な帰国制限と帰国後の自立支援義務懈怠について国の賠償責任を認めた中国残留孤児国家賠償訴訟神戸地裁判決を不服として、大阪高等裁判所に控訴した。

 これは、高齢化が進み、残された人生の時間が長いとはいえない原告らの切実な願いを踏みにじり、中国残留孤児問題の全面解決をいたずらに遅らせる暴挙であり、神戸地裁判決の言葉を借りれば、まさに「無慈悲な」政策決定であると言わなければならない。

 われわれ兵庫原告団と弁護団は、政府に対し、心の底から抗議する。

 本日の控訴の発表に際して、厚生労働省は、「帰国者の高齢化が進んでいるという現状などを踏まえ、これらの方々が安心して生活を営むことができるよう、継続的な支援をさらに充実させるなど必要な措置を講じ、今後ともきめ細やかな支援施策に努めてまいりたい」とコメントした。しかしながら、その内容には具体性が全くない。特に、孤児の強く要求している孤児独自の給付金制度にも全く言及していないことには失望を禁じ得ない。

 政府は、安倍総理大臣が国会答弁で言明した、中国残留孤児に対する「よりきめ細やかな支援策」を速やかに具体化するため、厚生労働大臣、総理大臣自ら、直ちに、当事者である孤児と面談し、その深刻きわまる被害の実態と孤児たちの求める全面解決要求に耳を傾けるべきである。厚生労働省は、直ちに原告団と協議を開始すべきである。

 われわれは、政府の不当な控訴、解決の引き延ばしに屈することなく、「日本に帰ってきてよかった」と思える日が来るまで、闘い続けることを表明する。そして、これまで残留孤児に寄せられた国民の皆さんの温かいご支援に心から感謝するとともに、今後ともこれまでに増して大きなご理解、ご支援をお願いするものである。

 2006(平成18)年12月11

※兵庫訴訟弁護団HP
http://www16.ocn.ne.jp/~kojikobe/zanryukojitop.html

文化人アピール

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 12月11日、100万人署名の呼びかけ人は、中国「残留孤児」問題の全面解決を求める緊急アピールを発表し、衛藤瀋吉さん、羽田澄子さん、林郁さん、井出孫六さん、渡辺一枝さんが、東京霞ヶ関の弁護士会館で記者会見を行いました(写真)。

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  緊急アピール

神戸地裁の原告勝訴判決を受け止め
国は中国「残留孤児」問題の全面的解決を

 この12月1日,神戸地方裁判所は,中国「残留孤児」たちが,帰国の著しい遅れと帰国後の自立支援がきわめて不十分であったことについて国の責任を追及した裁判で,画期的な原告勝訴判決を言い渡しました。

私どもは,国がこの判決を重く受け止め,これ以上「孤児」たちと裁判で争うことをやめ,苦難の人生を歩んできた中国「残留孤児」たちが祖国で安心して老後の生活を送ることができるよう国の政策を転換し,この問題の全面的な解決をはかることを,ここに強く求めます。

中国「残留孤児」は,終戦時,幼くして旧「満州」に取り残され,多くは終戦後40年以上もたってから,やっとの思いで祖国日本に帰国した方々です。帰国後の国の自立支援策がきわめて不十分だったことから,日本語も十分に話せず,就職もままならず,日本社会で疎外され孤立させられ,60歳代から70歳代となった現在,老後の生活の不安にさいなまれておられます。
神戸判決は,国が「孤児」たちの帰国を妨げたこと,自立支援の義務を怠ったことを明確に認めました。そして,中国「残留孤児」の被害は「自国民の生命・身体を著しく軽視する国の無慈悲な政策」によるものであり,政府は「無慈悲な政策によってもたらされた自国民の被害を救済すべき高度な政治的責任を負う」とはっきり述べています。また,「孤児」に対する自立支援策が「北朝鮮拉致被害者の支援策よりも貧弱でよいわけがない」,「国会議員は継続的給付金制度の立法を行うことが期待される」とも述べています。
この判決を聞いた原告の方々は,「やっと日本人になれた」,「凍りついた心がとけ始めた」,「これで『残留孤児』から解放される」と涙を流して喜んでおられます。これは,全国15地裁,1高裁で原告となっておられる2201名の「孤児」の方々すべての痛切な思いです。これ以上,「孤児」の方々に苦難の人生を歩ませてはなりません。

私どもは,2002年12月,「孤児」の方々が東京地裁に初めて裁判を起こしたとき,“中国「残留孤児」の人間回復の闘いに支えを”という内閣総理大臣宛の100万人署名のよびかけをいたしました。署名は,今年3月初めに100万筆を達成しました。約3年という短期間でこれだけの署名が寄せられたことは,多くの日本国民が「孤児」の方々の被害を他人事ではないと受け止めていることの表れに他なりません。
旧「満州」からの引揚げ60周年という節目の年にあたる今年,国は「無慈悲な政策」を終わらせ,「孤児」の方々が心から祖国に帰ってきてよかったと思える全面的解決を約束すべきです。それは,「孤児」の方々の人間としての尊厳を回復すると同時に,国策によって再び幼い子どもが棄てられることがあってはならないという,多くの日本国民の願いにつながるものでもあります。
私どもはこのような立場から,国民の皆さんと政府に向けて,緊急のアピールをするものです。

2006年12月11日

石坂啓 井出孫六 井上ひさし 衛藤瀋吉 加藤登紀子 坂本龍彦 佐野洋 ジェームス三木 新藤兼人 曾徳深 ちばてつや 仲代達矢 羽田澄子 林郁 古谷三敏 森村誠一 山崎朋子 山田洋次 渡辺一枝(五十音順)

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12.11「緊急アピール」賛同者(五十音順)

石坂啓(漫画家)
1956年生まれ

井出孫六(作家)
1931年長野県生まれ 
著書に『終わりなき旅 「中国残留孤児」の歴史と現在』など 神戸地裁,長野地裁で証言,12月20日鹿児島地裁で証言予定

井上ひさし(作家・日本ペンクラブ会長)
1934年山形県生まれ 
代表を務める「国民学校1年生の会」が「中国『残留孤児』の人間回復を求める市民連絡会」に参加し,東京地裁提訴時から孤児訴訟に協力。

衛藤瀋吉(東京大学名誉教授)
1923年生まれ
中国を中心とする東アジア政治史の研究

加藤登紀子(歌手)
1943年ハルビン生まれ
終戦時,父はソ連の捕虜になり,母と共に収容所生活を経て引揚げ

坂本龍彦(ジャーナリスト)
1933年山梨県生まれ
開拓団出身 ハルビンで敗戦を迎え1946年引揚げ 1973年8月,朝日新聞時代,国の公開調査に先駆けて孤児の肉親探しの情報を公開する「生き別れた者の記録」を企画 著書の『孫に語り伝える「満州」』は各地裁訴訟の甲第1号証となる 名古屋地裁で証言

佐野洋(作家)
1928年東京生まれ

ジェームス三木(脚本家)
1935年瀋陽生まれ
2003年7月市民連絡会主催の集会で講演

新藤兼人(映画監督)
1912年広島生まれ

曾徳深(日本華僑華人連合総会会長)
1940年横浜中華街生まれ 

ちばてつや(漫画家)
1939年東京都生まれ 
1941年朝鮮半島をへて瀋陽に渡る1946年引揚げ 中国「残留孤児」に心を寄せ,浅草寺の母子地蔵,瀋陽の養父母感謝像などのデザインを担当 1995年「中国引揚げ漫画家の会」 パンフレット表紙のイラストを提供

仲代達矢(俳優)
1932年東京都生まれ
1995年NHKドラマ「大地の子」で主人公の中国「残留孤児」陸一心の実父役を演じる

羽田澄子(記録映画作家)
1926年大連生まれ

林郁(作家)
1936年長野県生まれ 
1976年長野県開拓団出身の「残留婦人」と出会い,『満州・その幻の国ゆえに』など「満州3部作」執筆 「植民地文化研究」編集委員 2003年7月市民連絡会主催の集会で講演 東京訴訟を欠かさず傍聴。

古谷三敏(漫画家)
1936年大連生まれ 
「中国引揚げ漫画家の会」会員

森村誠一(作家)
1933年埼玉県生まれ

山崎朋子(ノンフィクション作家)
1932年長崎県生まれ
2003年7月市民連絡会主催の集会で講演

山田洋次(映画監督) 
1936年大阪府生まれ
2歳で大連に渡り1947年引揚げ

渡辺一枝(作家) 
1945年ハルビン生まれ 
父は現地で召集され消息不明 1946年引揚げ 2003年7月市民連絡会主催の集会で講演 東京訴訟を欠かさず傍聴