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日記

不当判決(弁護士会会長声明・談話)

中国残留孤児国家賠償請求訴訟東京地裁判決に対する会長談話(東京弁護士会)

 本日,東京地方裁判所は,いわゆる中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟において,国の「早期帰国実現義務」,「自立支援義務」そのものを認めず,原告らの請求を全面的に棄却する極めて不当な判決を言い渡した。
 当会は,1986(昭和61)年10月,中国残留邦人に対し,一時帰国者・永住帰国者に対する対策と中国永住者・即時帰国できない者についての対策という2つの視点から,政府に対し,中国残留邦人に関する要望書を提出した。
 しかし,その後も中国残留邦人に対する支援策が不十分であったことから,2002(平成14)年12月20日,残留孤児40名が,国に対し,早期帰国実現義務違反と自立支援義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を起こした。その後も全国各地で同種の裁判が提起され,現在,全国14地裁,1高裁において約2200名もの中国「残留孤児」が原告となり,被害救済を求めて闘っている。また6割を超える孤児が生活保護のもとでの生活を余儀なくされており,原告らの請求は切実である。
 しかしながら,本日言い渡された本判決は,このような原告ら中国「残留孤児」の思いや悲痛な叫びを一顧だにしない,極めて非情で冷酷な判決であった。
 2006年12月1日の神戸地裁は,国の「帰国制限」施策の違法および「自立支援義務」違反を厳しく指摘する判決を言い渡した。同日,安倍晋三首相は「中国残留孤児は高齢化しており,大変な苦労があったと思う。国としてきめ細かな支援をしていかなければならない」とコメントしたものの,実際になされた支援は,わずかに,「中国帰国者あんしん生活支援計画」経費(新規分)4億2400万円の予算増額がなされたのみであり,残留孤児の苦難に満ちた人生に対する政府の措置としては不十分極まりないものであった。
 戦後60年以上が経過し,残留孤児も高齢化が進み,残留孤児が生きているうちに残留孤児問題を解決するためには一刻の猶予もできない。
 当会は,国の責任を否定した本日の東京地裁判決に遺憾の意を表明するとともに,政府及び国会に対し,本日の東京地裁判決を評価するよりも,神戸地裁判決の判断を重く受け止め,引き続きその責任において,残留孤児の老後の生活保障など支援施策の抜本的な見直しや立法措置を行うなどの施策を早急に実現することを求めるものである。

2007年1月30日
東京弁護士会
会 長 吉岡桂輔

http://www.toben.or.jp/whatsnew/webapp/whatsnew/detail/?id_whats_new=671

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 中国「残留孤児」国家賠償請求訴訟東京地裁判決に対する会長声明(第二東京弁護士会)

 第二次世界大戦終戦後、中国に取り残され、帰国した後も困難な生活を送っている日本人「残留孤児」たちが、国に対して損害の賠償を求めていたいわゆる中国「残留孤児」国家賠償請求東京訴訟(1次)において、東京地方裁判所民事第28部は、1月30日、原告らの請求をすべて棄却する判決を言い渡した。
 先に、日本弁護士連合会は、1984年の人権擁護大会において、「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択し、中国「残留孤児」を含む残留邦人の日本国籍取得の手続きを速やかに整備し、早期に日本への帰還を実現すべきことや、自立促進のための特別の生活保障策を速やかに講じることなど、残置された人々の人権を回復すべきことを国に対して求めた。しかし、その後も中国残留邦人に対する国の支援は十分に行われず、2002年12月の東京地方裁判所への本件提訴を皮切りに、永住帰国した元中国「残留孤児」の8割を超す2200人以上が、全国15の地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する事態となった。
 今回の東京地裁判決は、「国の実質的な植民地政策や戦争政策は高度の政治的判断に基づくものであり、本来司法審査の対象とはならない」「そのような司法審査の対象外とされるべき国の政策を、国の作為義務を発生させる先行行為として取り上げることが相当であるのか疑問」などと述べたうえで、国の「早期帰国実現義務」と「自立支援義務」のいずれの存在も否定し、原告らの請求を全面的に退けた。
 昨年12月、本件と同様の事件について、神戸地方裁判所は「残留孤児」が生じるに至った経緯を具体的に認定したうえで、「戦闘員でない一般の在満邦人を無防備な状態に置いた戦前の政府の政策は、自国民の生命・身体を著しく軽視する無慈悲な政策であったというほかなく、憲法の理念を国政のよりどころとしなければならない戦後の政府としては、可能な限り、その無慈悲な政策によって発生した残留孤児を救済すべき高度の政治的な責任を負う。」として、国に総額約4億6000万円の支払いを命じた。今回の東京地裁判決は、この神戸地裁判決とは対照的に、国の義務を否定することによって中国「残留孤児」の法的な救済の途をとざすもので、人権の砦たる司法の役割に照らし、きわめて問題が大きいと言わざるを得ない。
 神戸地裁判決が指摘するとおり、日中国交正常化後も、「残留孤児」の多くが日本の親族の身元保証を求められるなどの制限措置によって帰国できない状態が続いた。やっと帰国できた「残留孤児」の多くが、日本語の教育を受けられず、就労の機会がないことから経済的困窮に陥っている現状は、深刻である。本件訴訟の原告らの6割以上が生活保護を受けている現実があり、高齢化も進んでいる。当会は、国会と政府に対し、少なくとも永住帰国した元「残留孤児」に対し、医療・住宅など生活全般にわたる支援制度や老後の所得保障制度を早急に整備することを、強く求める。

   2007年(平成19年)1月31日
第二東京弁護士会
会長  飯 田   隆

http://niben.jp/

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「中国残留邦人帰国者」の尊厳回復を求める会長声明(埼玉弁護士会)

 本年1月30日,東京地方裁判所民事第28部は,「中国残留孤児国家賠償請求東京訴訟」について,請求を棄却する判決を言渡した。
1 本判決は,国の「早期帰国を実現する義務」及び「自立支援義務」のいずれも認めず,同種事案の「兵庫県訴訟」における2006年12月1日付神戸地裁判決とは異なり,国の損害賠償責任を認めなかったものである。
2 しかしながら,本判決の原告らを含む「中国残留孤児」や「同婦人」と呼称される人々の人権問題について,日本弁護士連合会は,1984年の人権擁護大会において「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択し,その中で特に,国に対し特別の生活保障等の立法措置を速やかに講ずるよう求め,さらに,2004年3月には,日本政府の任務懈怠により,「中国残留邦人」は,1945年8月の敗戦前後の時期に中国東北部(旧「満州」)に取り残されたまま長年月にわたって中国に「残留」を余儀なくされ筆舌に尽くし難い苦難を被り続けた上,さらに,帰国が実現した後も今日にいたるまで尊厳に値する生活を保障されてこなかったとして,国に対し生活保護によらない特別の生活保障給付金制度の創設等を勧告しているのである。
3 本判決の原告らによる2002年12月の提訴に始まり,この間全国15の地方裁判所に総勢2000名を超える「中国残留孤児」による同種訴訟が提起されている。その中の「大阪訴訟」で請求自体は棄却した2005年7月の大阪地裁判決でも,「中国残留邦人」のうち帰国が実現した人々(以下「中国残留邦人帰国者」)の「多くが生活保護により生活をしている実態は看過することはできない」と指摘されていたのであり,また,上述の神戸地裁判決は,厚生労働大臣の「自立支援義務」の懈怠が違法であるとして国の損害賠償責任を認めたもので,これら判決が示すとおり,中国残留邦人帰国者の生活支援策の策定は国の喫緊の課題といわねばならない。
4 しかるに,この間,政府及び国会は,中国残留邦人帰国者に対する抜本的且つ十分な支援策を何ら具体化することもなかった。本判決後,安部首相は,政府・与党で中国残留邦人帰国者の支援策の拡充を検討する考えを明らかにしたが,厚生労働省は,他の「戦争被害者」支援との均衡を欠くとして難色を示していると報道されている。 
5 当会は,政府及び国会に対し,中国残留邦人帰国者の人権問題は,「戦争被害」によるものというよりも,むしろ「戦後」の内閣及び国会の任務懈怠による被害であること,及び,帰国者の殆どが帰国時点で既に高齢となっており,その残された時間が必ずしも長くないことを真摯に受け止め,直ちに,本判決の原告らを含むすべての中国残留邦人帰国者の人間としての尊厳を回復するため,生活保護によらない特別の生活保障給付金制度等の生活支援に向けた施策策定等を直ちに実現するよう強く求める。

 2007年1月31日
 埼玉弁護士会会長 蔭 山 好 信

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中国残留孤児国家賠償請求訴訟東京地裁判決に対する会長談話(横浜弁護士会)

 平成19年1月30日,いわゆる中国残留孤児国家賠償訴訟について,東京地方裁判所は,「早期帰国実現義務」及び「自立支援義務」そのものを認めず,原告らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。
 原告ら中国残留孤児(以下単に「残留孤児」という)は,幼くして満州の地に取り残されてから現在に至るまで,約60年間の長きにわたり,日本人であれば当然に有すべき権利を侵害され続け,帰国後も6割を超える残留孤児が生活保護を受給するという悲惨な状況で生活し,さらに,老後の生活にも不安を抱えている。全国には約2500名の帰国した残留孤児が生活しているところ,神奈川県在住の約200名を含む残留孤児が東京地方裁判所へ提訴したのを皮切りに,15ヶ所の地方裁判所に,総数2000名を超える残留孤児が本件と同様の訴訟を提起している。
 ところが,本判決は,原告ら残留孤児の被害の実態から目を背け,日本人としての尊厳の回復を求める原告らの願いを退けた。
 日本弁護士連合会は,1984年の人権擁護大会で,「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択し,残留孤児を含む中国残留邦人の日本国籍取得手続を速やかに整備して早期帰還を実現することや,自立を促進する特別の生活保障をするなどの特別立法を含む諸措置を速やかに講ずることを求めた。また,2004年3月には,人権救済申立を受けて,日本弁護士連合会が国に対して,帰国促進策等の徹底や戸籍回復・国籍取得手続の改善のほか,生活保護によらない生活保障給付金制度の創設や日本国民が受給する平均金額以上の年金が受給可能となる所要の立法措置を講ずることなどを勧告している。
 横浜弁護士会は,国が原告ら残留孤児に対する責任を速やかに認めることを願うものであるが,残留孤児のほとんどが高齢となっている現状において,その生活支援の必要性があることは紛れのない事実であり,そのための抜本的な支援策の実現が急がれる状況にあることにかんがみ,政府及び国会は,このような状況を重く受け止め,速やかに残留孤児の老後の生活保障など支援施策の抜本的な見直しや立法措置を行うなど施策を実現することを強く求めるものである。

2007年1月31日
  横浜弁護士会
   会 長  木 村  良

http://www.elint.co.jp/yokoben/info/statement/f_20070201_11182.html