日本民主法律家協会

「改憲ありき」の拙速な憲法論議に異議あり(いま、憲法審査会は?4・7院内集会)

 開会中の通常国会では、2月10日から衆議院の憲法審査会が毎週開催され、参議院の憲法審査会も3月25日から開催されはじめた。国会での改憲論議が、一気に加速している。
 しかし、改憲を求める市民の声は決して高くない。先の総選挙でも「重視した政策」として「憲法改正」と回答した有権者はわずか3%でしかない(日本テレビ出口調査)。総選挙中の各党党首の街頭演説でも、ほとんどが改憲問題には全く触れられていない(NHK調査)。
 にもかかわらず、総選挙で改憲を主張する勢力が議席の多数を占めたことを嚆矢に、「改憲ありき」、「スケジュールありき」の改憲論議となっていることに強く抗議する。主権者の負託をふまえない立法府の暴走はやめるべきである。

 

 とりわけ衆議院の憲法審査会では、自然災害や感染症の拡大、戦争など際に、国会機能維持や、国会の機能喪失の場合に法律と同じ効力をもつ「緊急政令」制定権限、緊急事態での人権制限などを可能にする緊急事態条項の創設が、改憲事項として論議されている。
 見過ごせないのは、その緊急事態条項創設論議ともかかわって先行して論議された「オンライン審議」について、憲法56条の「出席」に「オンライン出席」を含むとの解釈とりまとめを多数決で行ったことである。「憲法改正原案などを審査する機関」とされる憲法審査会に、憲法解釈の権限は付与されていない。権限逸脱であるとともに、改憲につながる論議を多数で強行したことも暴挙であり、強く抗議する。

 

 自然災害や感染症の拡大によって国会機能の喪失がありうるのか、選挙時の災害などに対応できる参議院緊急集会でなぜ不十分なのか、戦争有事の時にこそ政府の暴走にブレーキをかけるのが国会の役割ではないのか、など緊急事態条項の必要性についての国民への説明も論議もないままの衆議院憲法審査会の論議は、「改憲ありき」、「スケジュールありき」の証左である。審議の進め方、あり方を改めるべきである。

 

 憲法制定時の国会審議で、緊急事態条項を規定しない理由として「政府の自由判断を大幅に残しておくとどの様な精緻な憲法でも破壊される可能性」や「濫用危険性」を担当大臣が述べている。その懸念が払しょくできるほどに立憲主義が浸透し、権力分立が成熟したとは到底思えないのが今の政治の状況である。
 国会審議で118回も首相が虚偽答弁を繰り返し、野党の臨時国会開催要求が再三再四拒否される状況は、逆に権力の暴走、権力の乱用への懸念を抱かせるものである。
 通常国会冒頭の施政方針演説で岸田首相は「憲法改正に関する国民的議論を喚起していくには、我々国会議員が、国会の内外で、議論を積み重ね、発信していくことが必要」と述べている。このような上からの改憲論議の姿勢こそ、憲法の理念、立憲主義をふまえない権力の暴走の表れである。その暴走に歯止めをかけるのではなく、さらに加速させる状況を作り出している衆議院憲法審査会の審議状況に、抗議の意思を表明し、拙速な論議を改めるよう重ねて求める。

 

2022年4月7日

いま、憲法審査会は? 4・7院内集会