ひろば 2016年1月

 2016年 安倍政権による改憲策動を打ち砕く年に


穏やかな天候に恵まれた2016年の年明け。戦後70年に続く、憲法公布70年の新しい年。しかし、この年の憲法をめぐるせめぎ合いが決して穏やかであろうがずはない。
 日本国憲法にとって、既に昨年が重大な試練の年であった。安倍政権と自公両党による解釈改憲の策動は、95日もの会期延長の末、違憲の戦争法を成立せしめた。その強引な立法手続によって、憲法9条は大きく傷ついた。
 しかしその反面、この違憲立法に反対する国民運動が大きな盛り上がりを見せた。そして、「アベ政治を許さない」「野党は共闘」の声が、議事堂を揺るがせた。「立憲主義の危機」「立憲主義を取り戻せ」が広く自覚的な国民の共通認識となり共通スローガンとなった。これは憲法と平和への光明である。

2016年は、憲法への試練と光明の両側面がさらに厳しくせめぎ合うことになりそうだ。安倍政権は、けっして解釈改憲では満足しない。違憲立法の成功に味をしめ、さらなる軍事大国化と、戦後レジームからの脱却を求めて、明文改憲が目論まれることになる。国会に改憲派の議席多数のいまこそ明文改憲のまたとないチャンスと虎視眈々なのだ。

安倍首相は官邸での年頭の記者会見(1月4日)で、「憲法改正については、これまで同様、参議院選挙でしっかりと訴えていくことになります。同時に、そうした訴えを通じて国民的な議論を深めていきたいと考えています」と明言している。そのために、衆参両院の憲法審査会がフル稼働することになるだろうし、そこでの喫緊の焦点は緊急事態条項の新設ということになりそうだ。
 他方、立憲主義を取り戻そうとする自覚した国民の側の運動もさらに大きくなるだろう。「戦争法の廃止を求める2000万人署名」の活動を軸に、多くの市民運動の大同団結が昨年に引き続いて発展している。その運動が背中を押す形で、戦争法廃止・立憲主義の回復・明文改憲阻止のための野党の共闘は、少しずつ形ができようとしている。また、沖縄県民がオール沖縄の団結で安倍政権と激しく対峙している。全国からの支援が沖縄に集中し、全国が沖縄に学ぼうとしている。

昨年に引き続く試練と光明、そのせめぎ合いが今年7月の参院選で頂点を迎える。3分の2の壁をめぐっての攻防である。その結果が今後の憲法状況を大きく占うことになる。アベ政権の改憲野望を挫くか。改憲路線を勢いづかせるか。3月施行となる戦争法の具体的な運用や、自衛隊海外派遣の規模や態様にも大きな影響をもたらすことになる。争点となる主要なテーマは、昨年に続いて立憲主義・民主主義・平和主義である。

7月参院選に向けた闘いは既に始まっている。臆せず萎縮せず、アベ政権批判、改憲阻止の言論を発信しよう。第二次安倍政権の発足に危機感を感じて始めた私のブログ「澤藤統一郎の憲法日記」は、昨年暮れで毎日連続更新記録1000日を達成して、なお連続更新中である。安倍批判、改憲批判、立憲主義・民主主義・平和主義の擁護に徹している。

黙っていては状況を変えることができない。アベ政権批判と改憲阻止を言葉にして発しよう。平和の尊さを、民主主義の大切さを語ろう。言論の自由を最大限有効に活用して、今年をアベ政権による改憲の野望を打ち砕く年にしよう。

(弁護士 澤藤統一郎)


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