日民協事務局通信KAZE 2009年6月

 最近の刑事事件に復帰して


 私は、五年前の三月一六日の自由法曹団の司法問題を巡る討論会で、脳内出血で倒れました。半年入院し、その後、通院とリハビリを続け、徐々に通常の勤務に戻そうとしています。弁護士復帰後、刑事事件、それも控訴審を担当し、一生懸命やってきました。事件の受任から裁判の進行など、私の闘病以前とは、さまざまな面で大きく様変わりを感じています。そして、なによりも事件内容を通じて、この社会の病巣を見る思いでいます。
 まずは、事件の受任ですが、国選事件が中心となっています。弁護士会の刑事事件は、通常、国選事件として、法テラスで行われています。東京では、日弁連会館の三階の部屋で、三つの弁護士会から、国選予定の希望者が順番に、さらに、事件があれば、希望者が自由に、籤を引いてやっています。最近は、東京では、各会も、国選の希望者も増えたとかで、月五件以内等となってしまいました。費用は、従来の国選に比べても安いのが問題です。
 最近では、裁判員裁判をやる人の名簿(A名簿)が出来、報酬もかなり高い基準で出ることになったようです。
 刑事弁護の受任者には、元の検察官、裁判官の弁護士もいて、各自の刑事裁判の体験等も耳にすることがあります。
 事件は、一審(簡裁、地裁)、上訴(控訴、上告)、さらに即決事件と別れております。私は、控訴審を主にやってきましたが、最高裁、地裁、簡裁や即決裁判もやりだしました。
 私が担当した、実妹に姦淫行為をさせていた兄が、実姉から同様な行為をされていた事件や、一〇年前の強姦の罪から出所して、半年足らずにまた強姦と言う事件や、周りから虐められてきた被告人による放火未遂事件などは、被告人らの家族関係や生きてきた環境などを思い、彼らたちの新しい出発を望まずにはいられません。
 また、英国人の即決事件や、バングラデッシュ人の事件も、通訳付で解決しています。
 私が巡り合ったひとつひとつの刑事事件を通じて、大きな変革を遂げつつある司法制度が、事件の根源に迫るものになって欲しいと心から思っています。
 脳内出血で倒れた五年前の司法問題をめぐる自由法曹団内での議論を思いだしながら、先月、長野の白樺湖で開催された自由法曹団の五月集会に参加してきました。「裁判員法」の実施にともない、公判前整理手続の下でも積極的な闘の必要性や、量刑を巡る議論等もありました。私は、二日目には、刑事事件の判決があって、欠席せざるをえませんでしたが、日民協の司法研究会等でも、きちんとした検証と問題提起が必要なのかなという感じもしました。
 私は、今日もまた、刑事事件の生のケースを処理しながら、考えて行きたいと思っています。

(弁護士 岡田克彦)


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