日民協事務局通信KAZE 2007年11月

 メディアの内部的自由について


 日本のメディアは、@クロスオーナーシップ、A政府の直接的報道行政、B広告代理店の一業種一社制の不存在という三重苦を抱えているというのが私の持論です。@とは、新聞、テレビ、ラジオが系列化したという意味であり、系列下により、異種メディアが互いのメディア特有の利権(デジタル化に伴う公的負担、宅配制度の維持など)について批判し合うことがないために自民党との間で利権を巡る「借り」ができてしまい、権力批判ができないという「苦」です。Aとは、普通の国では、放送行政は、政府から独立した行政委員会が担当するのが通常だが、日本では郵政省(現総務省)が直接、放送行政(免許付与など)に携わっているため、権力批判ができないという「苦」です。Bとは、 普通の国では、広告代理店は一業種、例えば車であれば、トヨタの広告を受注したら、日産やホンダの広告を受けることができないというのが通常であるところ、日本では複数受注が可能であるため、電通などの巨大代理店が生まれてしまい、メディアが巨大代理店に財布を握られてしまい、企業などの批判ができなくなったという「苦」です。

 では、これらの問題をいかに解決するか?いきなり、三重苦に手をつけるのはかなり難しいのはお分かりのことと思います。そこで、A酷熾箔I自由の確立とB豪L者クラブの開放という二つの手段によって、メディアを変えられないだろうかと考えています。Aは、現場のジャーナリストの編集に対し経営陣が介入してきた場合に備え、阻止するための権利(社内の特別委員会への申立権、幹部への質問権、外部への公表権など)を付与するというものです。労使間での協議によって、実現できる可能性があります。この内部的自由は、ドイツでは法によって確立しているようであり、まずは、勉強会などを開きつつ、シンポなどで問題提起しようと目論んでいます。Bは、記者クラブにあらゆるジャーナリストが自由に出入りし、記者会見に出席することにより、権力監視機能を高めようというものです。この点はよく問題視されていますが、確かに、行政側・企業側の発表過程の透明性を高めることはとても重要であり、それが実現されていない状態は是正しなければなりません。こちらについても、現在、勉強会を行っているところです。

 言うまでもなく、情報の自由な流通なくして、民主主義はありません。しかし、日本では、情報の自由な流通が三重苦(@〜B)によって阻害されています。残念ながら、メディア自身、三重苦にあるがゆえに、三重苦問題について、正面から取り上げることができません。そのため、一般にまだまだ知られていません。そういう意味で、この場で日本メディア三重苦物語に書く機会を与えていただいたことを感謝しております。

(弁護士 日隅一雄)


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