JDLAトップへトップへ日本民主法律家協会 第52回定時総会決議

原発のない社会を目指す広範な共同を

 1 昨年12月の総選挙の結果発足した第二期安倍内閣は、停止原発の再稼働、原発建設の再開へ向けて大きく舵を切った。安倍内閣は原発を成長戦略の一つとして位置づけ、新規制基準の施行により、原発再稼働の動きを加速化するとともに、原発の海外輸出を積極的に推し進めている。
 しかし、こうした原発再稼働、原発輸出を断じて許してはならない。
 2 あの原発事故から2年以上を経過した現在においても、福島原発1〜3号炉は、少しでも警戒を怠れば、あるいは余震などを契機に、再び破局的危機が訪れる可能性をはらみつつ推移している。炉心の冷却のための「循環注水冷却システム」から取り出される汚染水は、敷地内に次々とタンクを増設して貯留しているが、増設可能容量は逼迫して来ており、先行きの目途は立っていない。放射能汚染水が地下水へ流入している危険が指摘されてきたが、今月、放射能汚染水を含む地下水が海に流出していることが確認された。福島原発の現状は、膨大な人、モノ、カネ、をつぎ込みつつ、そして収束作業労働者の被曝についてのコントロールも杜撰なまま作業が進められ、「事故収束」にはほど遠い状況にある。
 そして、今なお15万人以上の人々が避難先からの帰郷の見通しすら立っていない。避難基準の見直し、賠償との関わり、帰還希望者の年齢構成、インフラ整備、除染の限界と打ち切り、帰還の権利のとらえ方、被災者間の、帰還する・しないの対立等、帰還をめぐる様々な困難が立ち現れてきている。
 被害住民達は、放射能汚染の危険と将来の健康被害の不安にさらされ、家族の離散、仕事の喪失・損失、ふるさとの喪失、等々、人間的生活の破壊と、大きな精神的ダメージなど、種々の被害を被ってきている。しかし、被害の回復、補償、賠償は遅々として進まない。
 3 このような状況にもかかわらず、そして事故原因の解明も不十分なままに、前のめりに再稼働をもくろみ、「福島事故を経験した日本の原発は世界一安全」などと原発を海外に売り込む安倍政権の姿勢は、到底許されるものではない。
 その原発再稼働の論理は、「電力不足」「安い」「安全」などと、いずれも、既に事実をもって明確に否定されたものである。原発は、使用済み核燃料をはじめとする「核のゴミ」を数万年・数十万年のレベルで管理しなければならないことを始め、人類にとっては未完成の技術である。私たちは、このような負の遺産を次の世代に残してはならない。また、原発は核兵器保持の技術的基盤を確保するためにも維持しようとされており、このような軍事への転用可能性を絶つ意味でも、原発のない社会こそが目指されなければならない。
 4 安倍政権の原発再稼働の強行は、財界の強い要請と米国の圧力を背景としたものであり、それだけに脱原発の課題は決して容易な課題ではない。
 しかし、ドイツが明確に脱原発に踏み出したように、日本において達成できない課題では決してない。大きな国民の共同の輪を拡げ、広範な世論を結集してそれを国会に波及させよう。世論調査を見ても、おおよそ6割の国民が原発再稼働に反対している。脱原発の市民の運動も大きくねばり強く拡がり、脱原発訴訟は全国で取り組まれている。被害者たちの損害賠償請求も全国各地で起こされつつある。本年9月には、現在稼動している唯一の大飯原発が定期点検に入り、日本は再び全ての原発が停止する。その機も大いに生かして、運動を進めよう。
 そうした運動のなかで、私たちは法律家として、他の諸分野の人々との連携をさらに広げ、強め、原発のない社会を目指す国民の広範な共同を創り出していく上で役割を果たすよう、憲法改悪阻止の運動ともつなげて、最大限の努力をする。
 右決議する。

2013年7月27日

日本民主法律家協会第52回定時総会



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