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◆特集にあたって
共謀罪法案をめぐる国会情勢は緊迫している。
法案反対の世論は着実に広がっており、世論調査では共謀罪を今国会で成立させる「必要はない」は六四%に達し、「必要がある」の一八%を大きく上回った(五月一六日朝日新聞)。しかし、与党は死に物狂いで今国会(六月一八日閉会予定)での成立を目指し、審議未了の重要論点が多数あるにもかかわらず、野党の質問にまともな答弁もしないまま採決を強行しようとしている。
こうした情勢下、本緊急特集では、共謀罪法案批判をより理論的に深めるための論文を提供すると共に、共同して闘う野党の国会議員の声を紹介する。
松宮孝明論文は、刑法研究者らしく、法案の条文一つ一つの解釈を通して、この法案が「一般人」を明確に処罰対象とするものであることを明らかにする。共謀罪の主体が団体ではなく個人であること、予備より共謀の方が法定刑が重くなるなどの法の欠陥、六条の二「第二項」など、あまり論じられていない問題にも言及されている。
戒能通厚論文は、英米法研究者として、イギリスではコンスピラシー(共謀罪)が言論・思想の弾圧、ひいては労働者の団結それ自体の処罰に使われ、これが長い複雑な経緯を経て克服された歴史を解き明かす。共謀罪は、ドイツや日本など大陸法系の国にはないが、英米法系の国にはあると言われ、先進国にはあるのかということが、何となく弱点のように感じられる方もおられると思う。この意味で戒能論文は、共謀罪を根源的に批判する上で大変貴重な論稿である。
野党議員は、共謀罪反対の運動において、私たち共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会と、まさに共同の闘いを進めている。そこで、緊急特集の最後に、献身的に闘う野党議員の声を紹介して、エールを送りたい。強行採決を許さない世論は、必ず作り出せると確信している。
◆特集にあたって
三月一七日、原発被害者訴訟の最初の判決が前橋地裁で言い渡された。福島原発事故について、東電の重大な過失と国の規制権限不行使の責任を明確に認めた、極めて大きな意義を持つ判決であった。
千葉訴訟は既に本年一月二九日に結審、九月二二日に判決の言い渡しが予定されている。生業訴訟は、三月二一日に結審、一〇月一二日に判決が予定されている。これから各地の訴訟は次々と結審、そして秋以降判決を迎える。これからの全国の一つ一つの訴訟で、国と東電の過失と賠償責任を明確に認めた勝利判決を勝ち取ることが期待されるなかで、他方、三月二八日、大阪高裁は、高浜原発3・4号機について大津地裁が出した運転差し止め仮処分決定を取り消した。こうした逆流を乗り越える大きな運動を構築して行きたいものである。
「原発と人権」ネットワークでは、諸団体・諸個人との意見交換を経て、三月八日に、「緊急提言」を発表した。被害者への補償の打ち切りと帰還強制の強行をはじめとする国と東電の政策に対して、国と東電の責任を基礎とした、被害者に寄り添った政策へと転換を求めるものである。
真の被害の回復と地域の復興に向けて、大きな運動を拡げ、政策の転換を迫っていきたい。国の規制権限不行使の責任と、東電の重大な責任、そして被害者の「平穏生活権」を明確に認めた群馬判決はそのための大きな武器となる。また、政策のあるべき転換方向をトータルに提起する「緊急提言」も、運動の獲得課題を明確にしていく上でも、原発被害の現状を課題を分かりやすく市民に理解してもらう意味でも、運動の武器として活用してもらいたい。
今号では、群馬判決の意義とこれからの訴訟活動及び運動の課題。そして、「緊急提言」の意義と発展の方向性、運動への活かし方について六名の方々から貴重な論稿をお寄せ頂いた。
2013年に米国の諜報活動の実態を暴露したCIA元職員エドワード・スノーデン氏いわく「真実を知る手段がなければ民主主義は死んでしまいます」 情報は政治にとって重要な力です。だからこそ主権者国民にとって「表現・報道の自由」の保障、政府情報の「知る権利」の保障が必要不可欠なのです。 しかしまた、だからこそ日本国憲法を敵視する自民党政権は、都合の悪い情報を隠蔽します。そのために違法な手段を使っても情報を収集して情報操作に役立てます。暴走し続ける安倍政権は、物言う市民を取締まり、監視国家・社会づくりのために共謀罪法案を国会上程。その成立阻止は言うまでもないですが、政府情報の隠蔽にも抵抗し公開させる闘いも必要です。 例えば、公金の内閣房報償費(機密費)が実際には私的な政治資金のごとく支出されているという証言や資料があります。私が共同代表の市民団体「政治資金オンブズマン」は情報公開訴訟を3回提起。大阪地裁・高裁で一部勝訴し(2勝1敗)昨年最高裁に上告しました。 また、国民が監視すべき国会議員らの政治資金収支報告書の入手は、実際には容易ではありません。そんな状況を打開するために昨年公益財団法人「政治資金センター」(代表理事・松山治幸公認会計士)の設立に加わり、収集した収支報告書をインターネット公表する事業に取り組み始め、検索機能も完備させました。同センターでは寄附のお願い、政治資金を分析するボランティアを募集中。同センターの「ご支援・ボランティア募集」のページをご覧ください(http://openpolitics.or.jp/support.html)。 さらに、違憲の「教育勅語」を幼稚園の園児に暗唱させていた学校法人「森友学園」の小学校新設のために、大阪府豊中市内の国有地が昨年6月、鑑定価格9億5600万円から地下にあったゴミの撤去費8億1900万円などを差し引いた1億3400万円で売却されました。 しかし「適正な対価」による国有地譲渡(財政法第9条第1項)ではなかったとの疑惑が生じました。深さ2.8mより下部は沖積粘性土質で、ゴミ等が混入するはずがないので、ゴミ撤去費が高額すぎるからです。また、森友学園が国有地の譲渡を受ける前は借入でした。大阪府が緩和した小学校認可基準でも、校舎が借地上なら認可できません。ところが大阪府私学審は、条件付きとはいえ「認可」したからです。 森友学園の籠池理事長は安倍首相の政治に共感した日本会議の人物。小学校の名誉校長は、洗脳教育を絶賛した安倍昭恵・首相夫人。夫人は籠池理事長から依頼を受け、お付きの官邸職員を「秘書」として遣い財務省に「口利き」しました。その証拠(手紙・FAX)は理事長が公表しました。安倍首相から100万円の寄附を受けたと籠池理事長が喚問で証言。それを否定する喚問証言はありません。財務省と森友学園の交渉を記録した録音も暴露されました。 安倍首相の右翼のお友達のために国民の財産である国有地が違法に私物化されたのです。 ところが、「かかわっていたら首相も議員も辞める」と公言した安倍首相は、お友達を切り捨て、籠池証言を否定。昭恵夫人は逃げ続け、財務省・近畿財務局は森友学園等との交渉記録を「破棄した」と答弁。与党は政府保有資料の国会提出も、昭恵夫人や関係官僚らの証人喚問も拒否し続けています。 「この問題をうやむやにしてはいけない。」弁護士の方々の呼びかけに賛同し、私も「国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」(代表・阪口徳雄弁護士。会員約250名)の立ち上げに参加し、4月27日には近畿財務局長に「学校法人森友学園との交渉経過のデータの保存及び第三者委員会の設置等を求める要請書」を提出(要請賛同者は計280名)。 今後は情報公開訴訟や刑事告発も視野に入れて闘います。「弁護士・研究者の会」では入会を募集中です。氏名等をウェブサイトで公表しますので「会への賛同のお願い」のページ(http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/onegai.html)をご覧の上、氏名公表の可否を含め連絡ください(送り先のメールアドレスsinsokaimei@yahoo.co.jp)。 共に闘いましょう!
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