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 法と民主主義2013年11月号【483号】(目次と記事)


法と民主主義2013年11月号表紙
特集★改憲を阻む国民的共同をつくるために
特集にあたって………編集委員会
◆安倍改憲の全体像と国民的共同づくりの課題………渡辺 治
◆集団的自衛権論の批判的検討………山内敏弘
◆秘密保護法案の内容と問題点………清水雅彦
◆憲法改悪阻止の「統一」をどう創るか………丸山重威
◆安倍改憲に対抗する広範な法律家の共同をめざして………南 典男
◆日米関係に新しい外交を──日本の諸問題の解決に向けて………猿田佐世

特別企画●生活保護の改悪を許すな
◆生活保護法改悪の狙いと研究者共同声明運動の成果………三輪 隆
◆生活扶助費引き下げに抵抗した大生連、全生連への弾圧を許さない………林  治
  • 裁判・ホットレポート●国立景観求償訴訟が投げかけるもの──「住民自治のコスト」の首長転嫁は許されるか………田中 隆
  • シリーズV「若手研究者が読み解く○○法 Part2」9「刑法」刑法の基本理念から見たストーカー規制………金澤真理
  • ◆寄稿●法曹養成制度改革の現局面をどう見るか──新しい検討体制の発足にあたって………森山文昭
  • ◆リレー連載●改憲批判Q&A 4 政府の集団的自衛権解釈の変更をめぐって………小沢隆一
  • ◆リレートーク●明日の自由を守るために〈8〉一夜限りかもしれない(?)24条の会………川上麻里江
  • ◆書評●坂本修著『アベノ改憲の真実──平和と人権、暮らしを襲う濁流』本の泉社
  • ………小林 武
  • ◆委員会報告●司法制度委員会/憲法委員会………米倉洋子/小沢隆一
  • ◆資料●秘密保護法の制定に反対する憲法・メディア法研究者の声明
  • ◆資料●●特定秘密保護法の制定に反対する刑事法研究者の声明
  • 時評●「無限の力」で反撃を!………島田修一
  • KAZE●深まる「先の見えない苦しみ」と住宅街のイノシシ………海部幸造

 
改憲を阻む国民的共同をつくるために

特集にあたって

 参院選では安倍晋三率いる自民党が圧勝し、自民公明の与党は安定多数を確保して、改憲策動は新たな段階に入った。冒頭の渡辺論文がくわしく検討するように、新たな段階への突入を示すもっとも大きな指標は、安倍改憲が掲げてきた解釈改憲先行、九条隠しの明文改憲との同時並行戦略は変わらないものの、そのなかでも第一の解釈改憲先行戦略がいっそう強く打ち出され、急展開をみせている点である。特に、国家安全保障会議の設置、特定秘密保護法の制定による「戦争する国」づくりが一気呵成に進められようとしている。
 こうした安倍改憲の展開に対抗するために、改憲、とりわけ、解釈による憲法の改変を阻むための広範な国民的共同づくりが急務となっている。
 そこで、本特集は、こうした情勢の下で、「改憲を阻むための共同づくり」と題して、焦点となる二つの課題の検討を行いたい。一つは、安倍改憲の新たな特徴である解釈・立法改憲の動きを分析することである。第二は、安倍改憲を阻む国民的共同づくりの方向を具体化すること、とりわけ、国民的共同づくりに重要な役割を果たすべき責務を負っている法律家の共同づくりの方向を探ること、である。
 冒頭の渡辺論文は、九月一六─一七日に開催された日民協の合宿での報告を踏まえての、これら二つの課題についての総論的問題提起である。この合宿で政府の集団的自衛権容認論を批判的に検討する報告をいただいた山内氏の論文、特定秘密保護法案の問題点を指摘する清水論文の二つは、第一の課題に対するものである。第二の「共同づくり」の課題に関わっては、丸山論文に国民的共同のとりくみの進め方について、南論文では法律家の共同について、猿田論文に国際的な共同について論じていただいた。
 改憲を阻むための共同の輪を大きく深く広めるために役立てていただきたい。

「法と民主主義」編集委員会


 
時評●「無限の力」で反撃を!

島田修一(弁護士)

 1 九条世界会議が一〇月一三、一四日に大阪で開催された。千葉幕張メッセ以来、五年振りの開催である。海外から一一カ国一九名のゲストと市民五五〇〇名が参加。今回の会議の最大の特徴、それは安倍政権に激しい批判が集中したことにある。「九条の反省を全面否定し、再び軍事大国をめざす動きは国際平和の流れに逆行」「九条の役割は帝国主義への反省、再武装・軍国主義の歯止め。しかし安倍は敵対的態度を赤裸々に見せている。この動きはアジアに新冷戦と軍拡を招く」「集団的自衛権は日本の防衛とは関係ない。再び加害国を目指すものだ」等々、九条改憲と歴史認識に対する大批判が会場を覆った。当然のことである。
 日本国憲法はこの六六年間で一人の命も奪っていないが、大日本帝国憲法はアジアで二〇〇〇万人、日本国内でも三一〇万人もの命を奪ったように、「人を殺すことを認めた」憲法と「人を殺すことは絶対許さない」とした憲法の決定的違いがそこにある。しかし、再び「人を殺すことを認める」憲法に逆戻りさせようとする安倍に激しい批判が集中したことは当然である。
 そして、会議では「九条は日本だけの安全保障ではなくアジアの人々のための安全保障の規定である」「国際社会は九条を守ることを求めている」「九条は世界がめざすべき道」と、九条が平和構築の共有財産であることが確認され、「日米安保を沖縄に押しつけている偽善から脱し、安保を廃棄することこそ必要。九条を守るたたかいはそのことを抜きにしては不十分」には大拍手が沸き起こった。同時に、その「九条が今、危機の状態」とゲストと参加者の全員が警戒を強めた。
 2 安倍の暴走にどう対抗していくか、にも議論が及んだ。「九条改正反対が過半数であることに感動を覚えている」「九条を守って欲しい!日本の人々に期待する」「日本国内の平和勢力をもっと広げて欲しい。世界の平和勢力も後押ししていく」「市民が国境を超えてつながり、世代を超えてつながり、市民の力で九条をまもり活かしていこう」「平和を推し進める力は市民しかいない」。
 改憲勢力の日本維新の会が「政権を握っている大阪」で、ゲストと参加者は、平和を願う世界中の人々が力を合わせて九条をまもる運動を展開していく、市民の力を結集しその「無限の力」で反撃していく、を誓い合った。
 3 「無限の力」をどう発揮していくか。学習、教育、若い世代との交流等がゲストから提起されたが、会場には子ども連れの若い夫婦、カンガルー姿のヤングママが目立った。若者が安倍の暴走に正面から向き合い始めた姿をそこに見たが、会議の一週間後に九条の会東京連絡会が開催した九条の会交流会でも「市民の力」の広がりを確認することができた。「若者が宣伝行動を最後まで聞いていた。終ったら入会を希望してきた」「八王子では歩いて二万五〇〇〇世帯にチラシを配布した。チラシを見て入会希望が増えている」等々。そして、交流会は「我々がメディアになろう」を確認した。秘密法や解釈改憲で九条を骨抜きにし、既成事実を積み重ねて明文改憲を実現する「作戦」を伝えようとしないメディアの現実がある限り、九条の会が地元地域において、彼らが進める「戦争する国」づくりの姿を隅々にまで伝えていくことが「市民の力」を発揮するカギであるからである。また、「市民間の交流や相互理解は紛争と対立を乗り越えられる基礎となる」とゲストが指摘したように、九条を「守る」ことを通して東アジアの平和秩序をどう構築していくか、東アジアに平和共同体を作り出す運動をどう推し進めていくか、強まる排外主義に対抗していくためにもこの課題に向き合っていかなければならないことも確認した。
 主権者である市民が「無限の力」をいかに発揮すべきか。今、その時を迎えている。



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