日民協事務局通信KAZE 2005年8・9月

 歴史の大きな節目にあたり、日民協の役割を果たそう

 この度、はからずも事務局長を勤めさせて頂くことのなりました。
 私は東京の憲法フェスティバルに関わり、また青法協や地域での憲法運動にたずさわってきましたが、日民協との関わりは日が浅く、未だ十分に理解できていない点が多々あると思います。ただ、日民協が当然のことではありますが、青法協とはひと味もふた味も違うことは総会一つを見ても強く感じられるところで、こうした団体に関わらせて頂くのは、大変だろうとの想いと、楽しみであるとの思いが相半ばしています。
 自民党はいよいよ今秋改憲草案を発表するとして着々と準備をすすめ、七月七日の「要綱第一次素案」に引き続き、八月一日には成文化した「新憲法第一次案」を、大急ぎで発表しました。早ければ二〇〇七年夏の参議院選挙の際に改憲の国民投票をといっています(運動の広がりもあり、かなり困難になってきていると思われますが)。
 この自民党の「新憲法第一次案」をみると、彼らの最大の獲得目標である九条二項の削除、「自衛軍」の海外派兵(国連決議等を要さない)および憲法改正要件の緩和をしっかり盛り込むばかりでなく、加えて、人権制約原理としての「公共の福祉」の「公益および公の秩序」への置き換え、二〇条三項(国の宗教活動の禁止)の緩和、政党条項の新設等々、憲法の平和国家・人権福祉国家の理念をかなぐり捨てて軍事大国化・新自由主義構造改革国家へ向けて、大きく風穴を開けるものになっています。
 今回は、先の自民党「憲法改正草案大綱」に掲げられていた国民の義務(国防の義務、社会保障等の費用負担義務など)や、行政権の主体を総理大臣とする、憲法裁判所を創設する等々いくつかの項目については提案を控えていますが、これらが民主、公明とのすりあわせを意識してのことであり、今回の改憲で憲法に風穴を開けた上での、次回以降の改憲の課題として持ち越されているだけのことであることは明らかです。
 今回、憲法が改悪されても、それを阻止して国民が憲法を改めて選び取っても、それは社会の大きな転換であり、私たちは今、そうした大きな歴史の節目に立ち会っているといえましょう。
 現在、私たちが「昭和史」を読んで先の一五年戦争へ突入してゆく時代のうねりとその時代を生きた人々の生き様について思うように、今、社会の大きな転換点の中で、私たち一人一人の生き方が問われているのだと思います。
 こうした社会状況の中で、日民協は、改憲阻止のために本当に幅広い法律家の結集に役割を果たせるよう力を尽くしたいものです。
 私自身、自らの浅学非才ぶりは自分自身が一番よく知っているつもりなので、歴代の有能な事務局長の跡を継いでの仕事は荷の重いものがありますが、こうした時代の中で、こうした役回りを仰せつかった事を自分なりに受け止めて、日民協がその役割をより果たせるように、努力したいと考えております。よろしくお願い申し上げます。

事務局長 海部幸造・弁護士


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