日民協事務局通信KAZE 2003年2・3月

 日民協の未来へのメッセージ

(副理事長 有村一巳)

■名古屋は近くなった。東京から新幹線で二時間である。午後一時過ぎに着けばいいと、のんびり出かけたが、十二時には着いてしまった。久し振りに名古屋城に昇ってみた。城内には紅梅や白梅がちらほら咲き始めていた。天守閣から、はるかに日本中を見回し、今年もがんばろうと思った。
■「アイリス愛知」は名古屋城の近くにある。そこで日民協全国理事会とシンポジウムが開かれた。東京以外で理事会が開かれるのは久々のことで、どこか、いつもと気分が違う。全国理事会では、イラク問題や司法改革・経済・財政をめぐる情勢、「法と民主主義」の充実などについて論議し、声明文を採択した。
 参加者の顔ぶれがいつもと違うせいもあって、ユニークな意見が出され、新鮮な、一味違った理事会になった。
■引き続き、会議室で「韓国の司法改革から日本を考える」と題してシンポジウムが開かれた。記念講演は、ソウル地方弁護士会の朴燦運弁護士。
 氏は一九六二年生まれ、八四年に司法試験合格、現在「民主社会のための弁護士の会」国際委員長。日本の進歩的弁護士、弁護士会との交流を続けている韓国の若手人権派の弁護士である。新大統領のロ・ム・ヒョン氏も同じ「民弁」所属で、ちょっとやりにくくなった、というのはあるいは本音か。
■流暢な日本語を駆使して、韓国の司法政策の歴史的流れと現在の課題について話をされた。話を聞いていて、韓国と日本の司法は、良くも悪くも、かなり似た経過をたどっているな、と感じた。
 講演後の質疑では、韓国の大学法学部、法曹養成の問題点、司法改革を提起してきた勢力はどういう層か、法曹人口が増えたことによる変化、事件数の変動と弁護士の収入、仕事の内容、地位の変化等はどうか、などなど、率直な質問・意見が出された。
■朴弁護士は、それらについて、具体的な数字なども示しながら、丁寧に答えてくれた。
 弁護士は年々増えているが、活用面では成功していない、以前は弁護士の収入はかなり高く、評価も高かったが、最近ではいずれも下がってきた、などと語り、いわゆる「やめ判」「やめ検」と従来からの弁護士との関係、法曹界での女性の著しい進出問題などについても、会場を笑わせながら話をされた。
■氏は、韓国の司法を根本的に改革する近道として、「法曹一元」化の重要性を指摘した。また、朴氏自身、弁護士報酬の敗訴者負担に賛成する姿勢だったが、現在では、明確に反対の立場に立っている、とのことであった。
懇親会でも氏は質問攻めにあい、誠実に回答しておられた。お疲れのところ、お気の毒であったが、氏のお人柄への親しみが増し、若手有望弁護士への信頼感は、みんなのものとなった。
 朴さん、名古屋のみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。
■そこで一つ提案したいことがある。今後、地方での開催をもっと積極的に、気楽にやるようにしたらどうだろう。支部では、シンポジウムなどユニークな企画を取り入れ、会員はもとより、広く弁護士や裁判官、学者、市民団体、労働組合などにも呼びかける。
 さすれば、「法と民主主義」の支部での特色ある編集、会員、読者の拡大、ひいては日民協全体の質的前進に結びつくと思うノデアル。
 これが、今回の名古屋での全国理事会が発信した日民協の未来へのメッセージであると思うが如何。


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