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「残留婦人」訴訟・当該弁護団声明

声  明
    2006年2月15日
   中国残留邦人国家賠償請求訴訟弁護団

 本日、東京地裁において、中国残留邦人国家賠償請求訴訟の判決が下された。
 判決は当方が主張する事実について概ね認め、国に政治的責務があったこととして認定したものの、国家賠償法上の作為義務について極めて狭く解し、結果として国には違法性がないとして、請求を棄却した極めて不当なものであり、深い悲しみと憤りを禁じ得ない。

 今回の判決においては、「中国残留婦人は自己の意思で残ったものではない」「他の戦争被害者と異なる特殊性がある」と断じ、従前の国の主張を退け、また、これまでの国の施策の不備や遅れを多岐にわたり指摘し認定したり、歴史的経緯においても踏み込んだ認定を行うなど評価できる内容が含まれている。

 しかしながら、国の早期帰国義務・自立支援義務について幅広い裁量論に立ったり、国のさまざまな不作為に対して国の政治的責務を多言することで、裁判所としての判断を避けており、中国残留邦人問題の本質をどこまでふまえて判断されたか深い疑問を持つ。こうした国の義務違反に対する今回の判断においては、昨年の大阪地裁の中国残留孤児集団訴訟の判決より後退したものといえ、その意味でも不当である。

 なお、結果として、今回不当な判決が下されたが、裁判所が、判決において国の政治的責務を多言していることは、翻って、この問題が立法・行政においての解決を要請しているものと解され、国の中国残留邦人問題の解決に向けての責務は何ら減ぜられるものではなく、むしろ一層明確になったものといえる。

 総じて判決は、中国残留邦人にとって厳しいものとして到底承服できるものではなく直ちに控訴を準備したい。同時に、今後、本日の判決内容を十分に吟味し、さまざまな側面から、一日も早く、中国残留邦人問題の全面解決に向けて活動の展開を強めていくことを決意するものである。

中国帰国者の会HP
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