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神戸地裁判決・勝訴!(原告団・弁護団声明)

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中国「残留孤児」国家賠償・兵庫訴訟の判決について

2006年12月1日 

中国「残留孤児」国家賠償訴訟原告団全国連絡会
中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団全国連絡会

 本日,中国「残留孤児」国家賠償兵庫訴訟について,神戸地方裁判所第6民事部は,被告国の「早期帰国実現義務」および「自立支援義務」の双方の義務違反を認め,原告65名中61名に対する損害賠償請求を認める判決を言い渡した。

 原告らは,幼くして満州の地に取り残されて以来,現在に至るまで,約60年間の長きにわたって,国の誤った孤児政策によって,「日本人として,日本の地で,人間らしく生きる権利」という,日本人であれば当然に有すべき権利の侵害を受け続けてきた。
 本件訴訟は,このような原告らが,国の政策の過ちを問い,日本人としての,そして人間としての尊厳の回復を求めるとともに,国策によって子や孫を再び残留孤児にするようなことがあってはならないとの願いを込めた裁判であった。さらには,私たち国民1人1人が,戦後一貫して日本人として当然の権利から排除,隔離されてきた日本国民がいるという現実を直視し,戦後日本の民主主義の質を問い直す契機となるべき,現代的意義をも有する裁判であった。また,昨年7月,大阪地方裁判所が,中国「残留孤児」らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡し,これに対し,大きな批判が沸き起こっていた。

 本判決が,国の「早期帰国実現義務」および「自立支援義務」の双方の義務について,明確に法的責任を認めたことは,極めて重要な意義を有するものである。
 本判決は,「早期帰国実現義務」に関して,日中国交正常化がなされた1972年以降,国が「合理的な根拠なしに残留孤児に帰国を制限する違法な行政行為」をおこなったとして原告17名に対する賠償責任を認めた。
 さらに「自立支援義務」に関して,「政府は,条理に基づき,残留孤児に対し,日本社会で自立して生活するために必要な支援策を実施すべき法的義務(自立支援義務)を負っていた」と明確に認め,原告61名に対する賠償責任を認めた。
 また,本判決は,中国「残留孤児」が蒙った損害は,「戦争損害」であるとの理由で国の責任を免罪するものではないことを明快に指摘した。
 原告4名の請求を除斥期間の経過を理由として棄却したことについては課題を残したが,本判決は,国の政策の誤りによって,原告ら中国「残留孤児」らが,これまで戦後約60年にわたり苦難に満ちた人生を強いられ,未だに「日本人として,日本の地で,人間らしく生きる」という,日本人として極めて基本的な権利の実現ですら困難となっている現実を正面から認め,これらの事態が極めて重大な人権侵害であるとしたものである。

 現在,全国の15の地裁,1つの高裁で,2201名の中国「残留孤児」が原告となり,国の責任を追及する裁判を闘っている。本判決は,初めての勝訴判決であり,司法による原告らの権利および人間としての尊厳の回復の道を切り拓くとともに,従来の誤った孤児政策を断罪し,国にはこれを抜本的に転換すべき法的責任があることを認めたものに他ならない。
 
 本判決により,国の義務違反は明確に断罪された。
 国は,本判決を厳粛に受け止めて,自らの政策の誤りを率直に認めるべきである。そして,行政府および立法府は,中国「残留孤児」の権利および人間としての尊厳の回復を図るために抜本的な政策転換を果たすべきである。我々,原告団および弁護団は,本判決を機に,中国「残留孤児」に対する施策を抜本的に転換し,全国原告団連絡会が要求する全面解決要求事項について,国が,原告団および弁護団との間で早急に協議を開始し,中国「残留孤児」問題の全面解決を図るよう強く要求する。

以上

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 中国「残留孤児」国家賠償兵庫訴訟・原告団
      団 長  初 田 三 雄
 中国「残留孤児」国家賠償兵庫訴訟・弁護団
      団 長  宗 藤 泰 而
                       
 本日,中国「残留孤児」国家賠償兵庫訴訟について,神戸地方裁判所第6民事部(橋詰均裁判長,山本正道裁判官,宮端謙一裁判官)は,被告国の「帰国制限」施策の違法および「自立支援義務」違反を認め,原告65名のうち61名に対する損害賠償請求を認める判決を言い渡した。
 原告らは,幼くして満州の地に取り残されて以来,現在に至るまで,約60年間の長きにわたって,国の誤った孤児政策によって,「日本人として,日本の地で,人間らしく生きる権利」という,日本人であれば当然に有すべき権利の侵害を受け続けてきた。
 本件訴訟は,このような原告らが,国の政策の過ちを問い,日本人としての,そして人間としての尊厳の回復を求めるとともに,国策によって子や孫を再び残留孤児にするようなことがあってはならないとの願いを込めた裁判であった。さらには,私たち国民1人1人が,戦後一貫して日本人として当然の権利から排除,隔離されてきた日本国民がいるという現実を直視し,戦後日本の民主主義の質を問い直す契機となるべき,現代的意義をも有する裁判であった。
 本判決に先立ち,昨年7月,大阪地方裁判所は,中国「残留孤児」らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡していたところ,そのような中で,本判決が,国の「帰国制限」施策の違法性,および「自立支援義務」についての法的責任を明確に認めたことは,極めて重要な意義を有するものである。
 本判決は,「日中国交正常化後は,残留孤児の帰還に関与する政府関係者は,政府の残留孤児救済責任と矛盾する行政行為を行ってはならず,特段の合理的な根拠なしに,残留孤児の帰国を制限する行政行為をしたとすれば,それは,残留孤児個々人の帰国の権利を侵害する違法な職務行為となる」とし,政府の「残留孤児」を外国人として扱う方針に基づく各措置が違法であると認定した。
 また,国の「自立支援義務」に関して,北朝鮮拉致被害者に対する自立支援策よりも「貧弱でよかったわけがない」とし,原告ら中国「残留孤児」に対する実際の支援が極めて貧弱であり,生活保持の支援も1年を目処として強引に就労を迫っていたとして,義務違反を認めた。
 本判決は,ようやく帰国を果たした中国「残留孤児」に対して,国が,「自立支援義務」に違反した,極めて不十分な施策しか採らなかったことにより,原告ら中国残留孤児らが,未だに「日本人として,日本の地で,人間らしく生きる」という,日本人として極めて基本的な権利の実現すら困難となっている現実を正面から認め,これらの事態が極めて重大な人権侵害であるとしたものである。
 本判決は,司法による原告らの権利および人間としての尊厳の回復の道を切り拓くとともに,従来の誤った孤児政策を断罪し,国にはこれを抜本的に転換すべき法的責任があることを認めたものに他ならない。
 我々,原告団および弁護団は,除斥期間の適用を肯定して一部の原告について請求を棄却したことは容認しがたいとしても,原告ら中国「残留孤児」らの被害実態ならびに悲痛なる思いを真摯に受け止めて,裁判所が,政府による「帰国制限」施策の違法性および「自立支援義務」違反を認定した本判決を高く評価するものである。
 本判決により,国の義務違反は明確に断罪された。
 国は,本判決を厳粛に受け止めて,自らの政策の誤りを率直に認めるべきである。そして,行政府および立法府は,中国「残留孤児」の権利および人間としての尊厳の回復を図るために抜本的な政策転換を果たすべきである。我々,原告団および弁護団は,本判決を機に,国に対し,中国「残留孤児」に対する施策を抜本的に転換し,全国原告団連絡会が要求する全面解決要求事項について,原告団および弁護団と早急に協議を開始し,中国「残留孤児」問題の全面解決を図るよう強く要求する。
 また,同時に,我々,原告団および弁護団は,中国「残留孤児」問題の全面的解決の実現まで,全力で戦うことをここに宣言する。
 最後に,この訴訟に対し,署名・傍聴活動等により絶大なるご支援をいただいた全国の支援者ならびに他地裁の原告団・弁護団の方々,そして原告らを勇気付ける温かい取材と報道に取り組まれたマスコミ各位に対し,心よりお礼を申し上げるとともに,今後も,全面解決に向けてのますますのご協力とご支援をお願いするものである。
以上

※兵庫弁護団HP
http://www16.ocn.ne.jp/~kojikobe/zanryukojitop.html


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 全 面 解 決 要 求       

  中国「残留孤児」国家賠償訴訟原告団全国連絡会
  中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団全国連絡会
              

 中国「残留」日本人孤児は、日本の国策である満州移民政策が生み出した犠牲者である。にもかかわらず、日本政府が敗戦以来取ってきた孤児政策は、政策とは言えないほど貧困である。日本政府は、本訴訟を機に、「残留孤児」に対する施策を抜本的に転換し、「孤児問題」の全面解決を図るよう要求する。

1 責任の明確化と謝罪
(1) 早期帰国のための施策をとらずに「残留孤児」を中国に放置し、帰国後も十分な支援策を立案実施しなかったことの責任を認めること。
(2) その結果、「残留孤児」に多大な犠牲を強いたことに対し謝罪すること。

2 生活保障・生活支援
(1) 「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立支援に関する法律」(自立支援法)を改正し、国の責任において「残留孤児」の生活を保障する旨明記すること。
(2) 「残留孤児」の生活保障のため、「残留孤児」を対象とした新たな給付金制度を創設すること。
「残留孤児」が死亡した場合には、遺族年金として、配偶者に継承させること
(3) 残留孤児が、地域で孤立することなく、また安心して医療を受け、住宅を確保できるよう、生活全般にわたる支援制度を整備すること。
(4) 都道府県に1〜2カ所の日本語教育を受けることができる機関を設置すること。
(5) 働く意欲と能力のある者に労働の場を保障すること。

3 二世・三世対策
 下記のような二世・三世の自立を支援する施策を確立すること
(1) 就学・就労の支援を行うこと。
(2) 住宅確保の支援を行うこと。
(3) 国籍取得、在留資格の付与を容易にすること。特に国籍法附則第5条を改正して、女性孤児の子の国籍取得を容易にすること。
(4) 日本語教育の支援を充実すること。
(5) 安易に送還を行わず、残留孤児の家族であることに十分配慮すること。

4 歴史的検証・啓発活動
 具体的には、満州移民政策や引揚政策についての歴史的検証をすること、「残留孤児」が生まれた歴史を教育の場で教えること。

5 損害賠償
(1) 国の政策によって原告ら「残留孤児」が受けた損害を賠償すること。
(2) 訴訟遂行費用を支払うこと。

6 定期協議
「残留孤児」問題の抜本的解決のため、原告団・弁護団と厚生労働大臣が定期的に協議する場を設けること。

7 関連する事項
(1) 残留婦人にも同等の支援政策を行うこと
(2) 在中国「残留孤児」について、家族を分断することなく、希望する者の早期帰国をはかるなど、適切な施策をとること。
(3) 「残留孤児」の養父母について、国として、謝恩の事業など適切な施策をとること。