日本民主法律家協会

日本民主法律家協会第64回定時総会決議

 

1 参議院選挙の結果をどうみるか

 本年7月20日に実施された第27回参議院選挙の結果、自民党・公明党の連立政権与党は、合計で47人の当選にとどまり、非改選議員を含めても、248議席のうち過半数に達しなかった。他方、いわゆる立憲野党は、一人区では顕著な成果を得たが、全体として伸び悩んだ。参議院選挙の結果は、長く続いてきた自公政治のもとで、日本に暮らす人々が将来に不安を感じ、現状に悩み、苦しみ、もがき、変化を求めている状況を現わしていると言えよう。自民党・公明党に、改憲を公然と主張する参政党や国民民主党、日本維新の会の議席数を加えると、改憲発議に必要な3分の2を占める結果となり、引き続き改憲の動きに警戒が必要である。

 

2 私たちの課題

 私たちはあらためて、立憲民主主義の立場から、今、私たちが直面する政策課題を振り返る必要がある。
(1)軍事力強化の阻止と平和外交の促進
 近時、日米安保条約の枠組みすら超えて、中国の軍事的脅威を口実とする防衛費の拡大や日米の軍事同盟の強化が進んでいる。とりわけ、日本全土の約0.6%にすぎないにもかかわらず在日米軍施設の70%以上が集中する沖縄には幾重もの負担が課され続け、また南西諸島では軍事基地の建設が強行されている。こうした動きを阻止するとともに、憲法9条に基づく非軍事的な平和外交・善隣友好関係を促進していくことこそ、急務と言わなければならない。
(2)税制の抜本的見直し
 参議院選挙において多くの有権者が関心を寄せた経済政策では、物価高による生活苦を改善するための消費減税が大きな争点となった。逆進性の高い消費税については減税を進めるとともに廃止をめざし、あわせて応能負担の原則を推し進め、富裕層や大企業への優遇税制を改める必要がある。
(3)人の尊厳と自由を守る諸政策の実行
 すべての人が生まれながらにして持つ尊厳と権利は、人間存在の基礎的条件として承認され、医療・介護・教育・生活保護・労働条件の改善のあらゆる分野で生かされなければならない。教育分野に関して言えば、少なすぎる教育の公的負担を改善することこそ、社会権規約13条を国民の権利としてとらえたうえで、直ちに取り組むべき課題である。
 また、参政党などの主張に見られる排外主義、反共主義の扇動や、2022年12月の安保3文書の改定と相前後して、国家(警察権力)による国民監視・国民統制を強化する治安立法が制定(重要土地規制法、経済安保法、経済安保秘密保護法、サイバー攻撃法など)されたことに対しても、最大限の警戒をしなければならない。併せて、経済・学術活動を、軍事研究と戦争準備に動員しようとする露骨な動きに対して、国民的な反対運動を展開していくことが必要である。とりわけ、日本学術会議会員の任命拒否問題の解決を引き続き求め、本年6月に成立した新しい日本学術会議法によるナショナル・アカデミーの解体・変質を許さず、衆参両議員の付帯決議でも確認されたように、日本学術会議の独立性と自主性が尊重され、学問の自由が保障されるよう監視していく必要がある。
(4)司法の課題
 最高裁判所が、人権の「最後の砦」として本来の期待される役割を十全に果たし、人権の尊重と人間としての基礎的な要求の充足をはかる機関であるためには、最高裁判事の任命制度の見直しと国民審査制度の改善が不可欠である。また、下級裁判所についても、ジェンダーバランスの実現とともに、給与問題(地域手当差別)をはじめとする公平な人事政策の実現が不可欠であり、さらに裁判官会議についても、本来、期待されている役割を果たさせなければならない。
 あわせて、法科大学院・司法試験・司法研修所など法曹養成制度の在り方についても、いっそう綿密な検討が求められる。
 また、袴田巌さんの再審無罪判決を始め、相次いで再審無罪判決が下され、さらに刑事手続きの鉄則を無視した捜査や起訴を批判する国家賠償判決が出されていることを見ても、二度と誤判を生まないような刑事手続きの構築とともに、速やかな権利回復を実現する再審法の改正はまさに急務となっており、死刑制度の見直しも求められている。

 

3 国際的な課題へ視野を広げて

 また、私たちは国際的な課題へも視野を広げて、その解決のために力を注がなければならない。
(1)国際人権法を生活に
 日本国は、締結した国際条約を誠実に遵守する必要がある(憲法98条2項)。この視点から、政府から独立した国内人権機関を設置し、また国際人権機関に対する個人通報制を導入する必要がある。そして、国際人権条約への理解を深め、人権状況の改善につなげるため、地方自治体を含むすべての公的機関において、多様な関係者が参加できる建設的な対話の場を確保することが求められる。
(2)国際平和の実現のために
 武力の行使及び武力による威嚇を禁止する国連憲章にもかかわらず、ロシアによるウクライナ侵略、ハマースによる襲撃に端を発するイスラエルによる過剰なガザ地区及びヨルダン川西岸への無差別攻撃、アメリカとイスラエルによるイランの核施設などに対する攻撃、その他の地域的な紛争が生じており、これにより多数の市民の命と健康、尊厳が奪われている。軍事力の行使をただちに止めて、平和の裡に国際の平和と安全を実現する方法を協議する場をつくり、日本国政府も含めて、すべての国がこれに協力しなければならない。
(3)地球環境への取り組み
 国際司法裁判所の勧告的意見に示されているように、地球の温暖化を止めるためには、あらゆる公的な機関、関係する企業や事業体が適切な措置をとらなければならない。また、地球上の限られた資源は、軍備競争に注ぎ込むのではなく、全世界的な課題である「温暖化対策」のために用いるべきである。

 

4 私たちは呼びかける

 私たちが直面する課題は、上記のとおり、数多く存在する。立憲主義・民主主義・平和主義・人権擁護を掘り崩す政権の「悪政」について、私たちは市民と協力し、また立憲野党と連携して、厳しくこれと対峙し、正していく必要がある。また、地球規模の課題についても自覚し視野を広げ、解決のために注力しなければならない。
 参議院選挙を通じて明らかになった、将来に不安を感じ、現状に悩み、苦しみ、もがく人々の声にこそ、問題解決の糸口があるはずである。私たちは、こうした人々の声に耳を傾け、連帯の輪を大きく広げ、自らの権利とともに日本に居住するすべての人の権利を守るために行動していく決意を表明する。そして、こうした行動に参加するよう、多くの市民や法律家に連帯を呼びかける。

 

2025年8月9日
第64回定時総会参加者一同