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「戦後レジームからの脱却」に抗して
日民協第46回定時総会 宣言

 時代に、大きな波が押し寄せつつある。
 「戦後レジームからの脱却」を呼号する首相が誕生し、教育基本法が改悪され、憲法「改正」のための手続き法が成立した。政権与党は「新憲法草案」を選挙の公約とし、集団的自衛権行使を可能とすべく解釈改憲が強行されようともしている。憲法的価値は、かくも危うくなっている。
 それだけではない。福祉は切り捨てられ、貧富の格差は広まり、雇用の不安定化が社会に暗い影を落としている。
 このような時期にこそ、あらためて日本国憲法の理念を想起しなければならない。私たちは、どのような思いと希望を憲法に込めたのか。それこそ、首相が脱却を目指すという「戦後レジーム」なのだから。
 何よりも平和、そして国際協調。
 そのための戦争放棄、戦力不保持。
 神権天皇制を否定した国民主権。
 何にも替えがたい至高の価値としての個人の尊厳。
 そして、国家の支配から独立した教育の自由。国民の精神生活を呪縛した国家神道を復活させない歯止めとしての政教分離‥。
 日本国憲法は、「戦前レジーム」を徹底して批判するところから生まれた。「戦後レジームからの脱却」とは、日本国憲法を否定して「戦前レジーム」回帰への志向にほかならない。
 それだけではない。日本国憲法は国民の生存権を宣言し、福祉国家理念を宣言し、形式的平等から実質的平等を理想に掲げた。しかしその理想は、市場原理への拝跪によって打ち捨てられようとしている。これも、「戦後レジームからの脱却」が目指すところ。
 いま私たちがなすべきことは、「戦後」出発に際しての理念を再確認すること、「戦前」を反省せず居直る現政権を徹底して批判すること、そして経済的強者の横暴を抑制すること。これらの意味を込めて、日本国憲法を擁護し活かすこと。
 私たちは、時代の傍観者ではいられない。この大波を押し返す精一杯の努力が求められている。国の支配者が、再びの過ちを犯すことのないよう、法律家としての職能を活かして国民運動の一翼を担うことを宣言する。
2007年6月30日
日本民主法律家協会
理事長  中田直人



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