日民協事務局通信KAZE 2013年5月

 会場に参加者があふれた4・28告発集会


 政府が開催した「4・28式典」に反対して、歴史教育者協議会、子どもと教科書全国ネット21、出版労連、日本ジャーナリスト会議、日民協など八団体が共催した、「沖縄を切り捨て対米従属を固定化した4・28は『主権回復の日』か!? その偽りを告発する集会」は、四月二八日、東京・文京シビックセンター・シルバーホールで開かれた。
 この日は、政府の式典に反対する集会が、沖縄のほか、都内でも、御茶ノ水のホールや日比谷公園など数カ所で開かれたが、この集会には約二〇〇人収容のホールに二五〇人が詰めかけ、イスも資料も大幅に足りなくなる盛況で、参加者は、改めて安倍内閣の危険な姿勢に抗する取り組みを決意した。
 集会では、石山久男さん(沖縄戦の史実歪曲を許さず沖縄の真実を広める首都圏の会)の開会の辞、俵義文さん(子どもと教科書全国ネット21)の主催者挨拶のあと、「4・28『主権回復の日』の虚構性──サンフランシスコ講和条約から領土問題と改憲状況を考える──」と題して、歴史教育者協議会委員長の山田朗明治大学教授が、また、「『歴史の偽造』とマスコミ──全国紙の動向を中心に──」をジャーナリズム研究の立場から私が報告した。
 山田さんは「主権の回復なら占領の終了と戦争の後始末の終了でなければならないが、サンフランシスコ講和条約はそのどちらにもならなかった。いま起きている領土問題の紛争の原因は当事者抜きに決められた条約にある」と指摘。「未着手、未完の戦争の後始末を進めるとともに、EUなどの経験に学び、国際的緊張をつくり出す排外主義に流されないことが大切だ。欧米は、アジアのインド、中国、日本を分断支配する戦略をとっている。これを見据えた近隣諸国とのつきあいが必要だ。政治不信や無力感が改憲勢力に束ねられることがないよう、改憲・軍拡の危険性を訴えよう」と呼びかけた。
 私は「当時の新聞には、全面講和か片面講和かの論争は既に紙面になく、沖縄の『分断』という意識も見られない。新聞は一年前からレッドパージで共産党員や良心的な記者が追放され、自由に書ける状況ではなかった。講和会議開会の日には、占領目的違反で共産党幹部一八人に逮捕状も出た。私たちは『独立』と教えられてきたが、それは間違っていた」と訴え、「いま、対米従属と新自由主義の改憲が提起されている。安倍内閣はマスコミを意識した政策提起をしている。記者会見など権力のテーマ設定を乗り越え、いま言うべきことを言うジャーナリズムを取り戻すことが必要だ」と強調した。
 このあと、「沖縄平和ネット首都圏の会」の柴田健さんや琉球新報出身の米倉外昭新聞労連副委員長が発言、フロアからも質問や意見が出された。
 最後に、日本科学者会議の北村浩さんがアピールを読み上げて採択。マスコミ関連九条の会連絡会の仲築間卓蔵さんが、ヒトラーの宣伝ポスターを手に、「戦前はものが言えないままだったが、いまは誰でも発信できるツールがある。向こうだけにやらせないで、こちらも積極的に訴えていこう」と呼びかけた。

(編集委員・丸山重威)


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