日民協事務局通信KAZE 2010年8・9月

 焼津の味、夏合宿の「味」に大満足


日民協夏合宿に初めて参加しました。毎月届く「法と民主主義」にはざっと目を通していたので、参加者の皆さんは、私の中では全員ビッグネームのため緊張しましたが、みなさん楽しい方ばかりで充実した二日間を過ごすことができました。
 @高見澤昭治さんの『無実の死刑囚』を、松本清張『日本の黒い霧』で下山事件の真相を知ったとき以来の興奮をおぼえながら読み終えたばかりだったので、その著者ご本人にお目にかかれたことに感激。A「法と民主主義」を編集している人達のテンションと志の高さに感激。B望月爾(ちか)・立命館大学准教授と二〇年ぶりに再会。税理士なりたての頃、某学習会で一緒に勉強させてもらったことを覚えていてくださり感激。C安藤実先生のお話を聞くのは二度目で、合宿前に入手した『富裕者課税論』(桜井書店)は、マンガばかり読んでいる私にとって字ばかりで最初しんどかったけれど、読み進むうちに昔勉強したシャウプ勧告のことを思い出し、勧告から六〇年たった現在でもその内容はまったく色あせていないことに感激。富裕層からしっかり税をとることで、財政基盤を安定させるとともに富の集中を防止し民主主義の伸展を阻害する財閥解体をめざす。間接税は逆進性が強いので導入しない。ブラボー。
 Dそれに対し政・財・官が一体になってその精神をねじまげてきた事実にもある意味、感激。財源を間接税にシフトさせ、所得税率、法人税率、相続税率を引き下げさせる。その理屈は「公平」「わかちあい」。彼らは六〇年間税の集め方について、まったくブレがないことを再認識できました。

 安藤先生の話を聞き終えて、久しぶりに税金の勉強をしたためか、先生が何度も執筆されている『税制研究』の主宰者であった谷山治雄さんと、先日亡くなられた北野弘久さんのことを思い出しました。業界の大先輩で事業家としても成功されておられている谷山さんのスマートな服装と振る舞いは私のあこがれでした。
 そして北野さん。税理士の合格祝賀会で登録したばかりの私たちに「日本は租税国家です。わかりますか?この意味」「応能負担の原則は、憲法二五条から要請され…」と、マイク不要の大音量と大きな身振り手振りで熱弁する北野さんの姿。税理士登録したばかりの私にはちんぷんかんぷんでしたが、今もその声まで思い出せるほど強烈な経験でした。勉強会のあと「私はほかの学者と違うんです。申告書も書けない学者に何がわかりますか!」居酒屋でイカの丸焼きをかじりながら私たち新米税理士に檄を飛ばして下さった経験は今になってみると得難い体験です。

 ところで、私たち税理士業界のことですが、税理士会は規制緩和のおかげで会員数が順調(以上)に増えています。東京税理士会は数年前、内部留保が一〇億円を超えて監督官庁から会費の減額を指導勧告されたほどですが、一方で税経新人会などの任意団体は会員数が減少し、各団体とも従来通りの機関誌発行や研修活動を維持できなくなってきています。さらに会員の高齢化にともない、継続的な研究活動や内外への働きかけなどができる「働き盛り」の会員が減少しています。
 民主主義をささえるべき勢力が、時代の流れで仕方がない、と半ばあきらめ顔で弱体化していく横で、富裕層・支配者層は着々と富の集中にむけてのインフラ整備をすすめている事実を放置しておくわけにはいきません。
 士業の任意団体には業界を越えて暗い話題での共通点はたくさんあるようですが、知恵を出し合って再度組織を大きくしてまき直そうではありませんか。そうそう、焼津の名店「三味(しゃみ)」の鰻もたいへん結構、感激でした。

(税理士・田村 淳)


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