日民協事務局通信KAZE 2009年12月

 慌しい活動の日々と、これからの課題


 七月の総会で久保田穣先生が理事長に就任された。久保田理事長は、長い間、司法制度委員会の中心メンバーとして活動に参加し、また本誌の「司法をめぐる動き」の連載を担当されていたが、三月で東京農工大学の教授を定年退職し、時間に少し余裕ができたということでお引き受けいただいた。私も少しはお手伝いしなければと考えて執行部に復帰させてもらったが、この約半年、本当に慌しい日々が続いた。
 毎年夏には執行部合宿をもち、その時々の重要問題をとりあげて勉強し、課題について話し合うことにしているが、今年は核兵器の廃絶に向けた四月のプラハでのオバマ演説を機会に、これをどう前進させるかをテーマに取り上げた。当日は、総選挙の日に重なったこともあり参加者が少なかったが、充実した報告が続き、それを基に本誌の一〇月号が組まれた。その間に国連安保決議やオバマ大統領へノーベル平和賞の授与が決まるなど、今年は核廃絶に一歩大きく踏み出した年として、後世に記録されることを願いたい。
 その総選挙で民主党が圧勝し、政権交代をしたことで国民の期待は大きい。事業仕分けや、核密約の開示などによって、これまでの官僚支配体制が大きく変わりつつあるようにも見えるが、これからどのような展開を示すか、目を光らせる必要がある。
 司法界ではなんといっても、五月から始まった裁判員制度がどうなるかが最大の問題である。マスコミ報道などを見ると、裁判が劇場化しており、だれのための、何を最も大事にしなければならないかが、あやふやにされている様子が良く分かる。今年の司法制度研究集会は会場が満席になる盛況ぶりで、その内容は今月号の本誌をご覧いただくとして、裁判員裁判の現場からの報告については、その評価が大きく分かれた。今後、引続き検証する必要がある。
 今年は足利事件、布川事件によって冤罪がクローズアップされたが、最高裁が刑事事件について五件の破棄判決を出たことは、大いに評価されてよいであろう。最高裁も少しはまともになるかと期待していたところに、葛飾の「ビラ配り」事件で有罪判決を確定してしまったことに愕然としたものは多いであろう。一人の裁判官の少数意見もなかったことに、あい変わらず司法の危機的な状況を感じざるをえない。
 米軍の基地の移設に関するマスコミの論調には、「日米同盟」を重視し、沖縄県民の悲痛な訴えより、米国の意向に配慮する「属国意識」が感じられて情けない。来年は安保改定五〇周年。日民協も、再来年は結成五〇周年を迎える。組織・財政委員会では日民協の老齢化が問題になっているが、若い会員を増やすとともに、日本の真の独立と民主主義、それに人権と法の発展のために、原点に立ち返って活動を活発化する必要がある。

(副理事長 高見澤昭治)


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