日民協事務局通信KAZE 2008年5月

 燎原の火のごとく各地に広がる「憲法ミュージカル」


 今年、四月下旬から六月上旬にかけて、東京・三多摩地域、大阪そして山梨の三カ所で憲法ミュージカル『ロラ・マシン物語』がリレー公演されました。私は、実行委員として、三多摩地域の憲法ミュージカルに参加させていただきましたので、そこでの雑感を綴ってみたいと思います。
 まず、そもそも憲法ミュージカルとは、各地域の公募の市民約一〇〇人が出演する、憲法をテーマにしたミュージカルのことです。一九九三年から一〇年間、埼玉の弁護士有志が企画しました。二〇〇六年は山梨で公演されて、二五〇〇人を動員しました。翌二〇〇七年は三多摩地域四カ所(町田、小平、立川、八王子)で、若手弁護士が呼びかけ人となり、沖縄戦をテーマにした『キジムナー』が公演され、観客動員六一〇〇人を記録しました。
 そして今年、埼玉から山梨、山梨から三多摩へと飛び火した「憲法ミュージカル」が、さらに大阪にも飛び火して、三多摩、大阪、山梨の三地域で、それぞれの市民が同じ演目を熱演するリレー公演(全一二回)となったのです。今年の演目『ロラ・マシン物語』は、フィリピンの実在の元「慰安婦」の生涯を描き、「個人の尊厳」とは何かを問いかける物語です。私がこの原稿を執筆している五月一〇日現在、大阪で四回の公演がいずれも満員の大成功をおさめ、三多摩地域でも日野市民会館大ホールでの公演が満席となる大盛況でした。
 憲法ミュージカルの本番のステージの感動は、私の稚拙な表現力では伝え切ることができません。一〇〇人の出演者達が放つ熱いメッセージをビリビリと感じることができます。一五〇時間超の厳しい稽古、その時間をともにしてきた一〇〇人の出演者のチームワークはもちろんですが、なにより、出演者の「平和を愛する思い」が観客の感動を呼び起こすのだと思います。
 戦争を全く知らず、「慰安婦」について考えたことなど全くなかった若者が、作品を演じる中で、戦争で無惨に殺された市民や、逆に、殺戮を繰り返した兵士を追体験します。そうして、当時の人々の悲劇を想像し、戦争を疑似体験することが、戦争を知らない若い世代にとって、平和の大切さを実感するためにとても大事なことだとおもいます。「慰安婦」とされたのが自分の母や妻や娘だったらと想像するだけで、おぞましい気持ちになります。絶対にあってはならないことだと心の底から思うようになります。そして、そこから生まれた平和への確信が、説得力のある演技につながり、一〇〇人が心を一つにすると、驚くべきパワーを放つミュージカルとなるのです。
 とにかく、市民一〇〇人のステージは本当に感動的です。まだ憲法ミュージカルをご覧になっていない方、機会があれば是非ご覧下さい。熱い市民一〇〇人に勇気づけられますよ。

(弁護士 田所良平)


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