日民協事務局通信KAZE 2004年10月

 財政危機がどのような形で爆発するか

(税理士 奥津年弘)

 最近税理士の間で、中小企業の経営者との話の中で題名の議論が増えてきたと話題になった。その中身は、経済や事業への影響を予測する意見や「ユーロの預金にしたほうがいいか」など財産保全の相談もある。確実に不安が大きくなっている。

 年内もあと二ヶ月余、政治の世界では、これから来年度予算の折衝が本格化する。しかし、政府与党と官僚は、この一〇年、財政が危機的状態だといいながら、結果としては、国・地方の債務は、減少はもちろん現状維持すらできず、あれよ、あれよという間に七三〇兆にもなった。国民ひとりあたり六〇〇万円だ。

 国家財政については、自民党は、野党になった瞬間もあるが、一貫してこの財政に対し、決定遂行してきた立場にあり、その財政破綻の責任を負う立場にある。かつて自民党議員でありながら、現在民主党に所属している議員も同罪だ。近年与党入りをして多数決で自民党ささえている新与党も同罪。同時に政治を執行する能力、政権の担当能力がないことはもちろん、現在もまったくの無責任状態だ。内閣改造後の大臣たちの発言にも、関西空港拡張工事、ミサイル防衛構想などを推進するという、あいかわらず公共事業・軍事は聖域だ。与党は、借金が増えると、どのような事態が予測されるのか、最悪の場合なにが起きるのか国民に説明提示もしない。いけるとこまで、使えるところまで突き進んでいくつもりだ。

 「爆発、そのとき政府は、どう対応するのか」。その前兆もしくは前後して、国民の目をそらせるか、混乱させるかのように、戦時体制もしくはそれに近い体制・雰囲気にもっていき、国民経済や生活に強い制限を持ち込むことを考えているであろう。消費税の抜本的税率引上げ、社会保障給付の大幅凍結、預貯金一部封鎖など。今の憲法下では、とてもできない。憲法九条をはじめとする人権条項の改定は、まさに財政危機という国家の危機管理も目的にしているといえる。憲法「改悪」阻止を契機に、政権の抜本的転換ができないものか。

 財政といえば、もうひとつ。当協会の財政だ。議案にも総括されており、重複するが、若干ふれると、現在の財政状況は、昨年にひきつづき厳しいものがあるが、一定正常化の道筋が見えてきている。特別カンパでは、ハンセン弁護団、水道メータ談合弁護団、トンネルじん肺弁護団等から多額のカンパをいただいた。

 また、第四一回定期総会で設けられた財政救援基金も一定金額に達している(これは、費消しないで基金としている)。また人件費予算は、未達であった。常勤事務員退職後、採用できずに、常勤一名とアルバイト等で補充やりくりしてきた。早急に改善したい。

 本年五月より、協会の活動と「法と民主主義」を充実させてほしいという方からのご厚意により、現事務所に移転をみた。事実上の共益費のみの負担となり家賃負担は、軽減されたが、財政の健全化と協会の活動の充実をどう図るか今後検討していく課題である。また、支部の活動・企画をバックアップするために、今期以降予算を設けていく方向である。

 最後に、残念ながら毎年未収になる会費がある。過去の会費を回収できなければ結果として資金不足となり、特別カンパ頼みとなる。会員の皆様には、組織の継続のためにも、あいまいにせず早めの払い込みをお願いしたい。何期分かためた方は、とにもかくにも、今期分の払い込みをお願いしたい。これからの憲法をめぐる運動のやま場をむかえ、財政は、ひとりでも多くの人に担っていただきたい。


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